ありの お話です。
イソップ童話に「アリとキリギリス」というお話があります。 ほとんどの方が御存知でしょうけれど、念のためにおさらい。
夏の間に一生懸命に はたらくアリたちを、 遊んで暮らしてばかりいるキリギリスはバカにしていました。
やがて寒い冬がやってきて、食べるものに困ったキリギリスはアリの家を訪ねます。 しかし、アリたちは夏の間に はたらかなかったキリギリスを非難します。
キリギリスは飢えと凍えで死んでしまい、アリたちは無事に冬を越しました。
と、
まあこんなお話ですね。 本によっては、アリたちがキリギリスに食べ物を与えて助けてあげるという、 心温まるものもあるようですが、これはとくに日本に多いようです。
外国では、アリが死んだキリギリスを食べてしまうという結末も多いようですが、 せっかくの童話でそんなリアルな話はいやだなあ。
でも 実際はそんなに 蟻は働き者ではありません。真夏は 夏眠したりして 暑さに 耐えてますからね。
それに 本当はキリギリスじゃ なくて 原本は蝉だと聞きました。でもフランス地方には蝉が居ないため キリギリスにしたと 聞きましたよね。
さてさて、「アリとキリギリス」の話でもわかるとおり、 アリといえば、小さいけれど働き者というイメージが強いですね。 今回は、そんな小さなアリにスポットライトを当ててみましょう。
アリというと、行列をつくってせっせと働いている姿が印象的です。 アリは嗅覚のすぐれた昆虫で、 食べ物を見つけたアリは、ほかのアリへの合図となる 匂いを地面に残します。 ほかのアリはその匂いをたどり、自分もにおいを残します。 一匹だけのにおいでは少し時間が経てば消えてしまいますが、 仲間が順々ににおいを残すことで、行列ができあがります。
アリはもちろん言葉を発することはできませんが、会話をすることができます。 触覚で相手のにおいをかいで仲間かどうかを確かめたり、 危険がせまったときにはあごを開いて、そこから合図のにおいを出したりします。
アリはあらゆる生物の仲間でも、とくに強い社会性をもっています。 それは、考えようによっては、人間をもしのぐほどです。
僕たち人間は、生まれた環境や育ち方によって、 金持ちであったり貧乏であったり、さまざまな生き方をしますが、 本来、生まれ持った権利(人権)や基本的な身体能力は同じです。
が! アリの世界では美しい”平等”など通用しません。
生まれたその瞬間から、権利も身体能力もはっきり区別されています。
アリは、女王アリ、雄アリ、はたらきアリ、兵隊アリに分類されます。 はたらきアリと兵隊アリは区別がはっきりしない種類もいるので、 ここでは、兵隊アリをはたらきアリに含めて、3種類にしてみましょう。
雄と雌とがある動物については、 交尾をし、雄の精子と雌の卵が受精して卵や子どもができますよね。 このような生殖の仕方を『有性生殖』といいます。
アリは、この常識が通用しない変わった生殖を行います。
もちろんアリも交尾をするのですが、 受精した卵からは雌が産まれ、受精しなかった卵からは雄が産まれるのです。スゴイデスネ。
そして、雌の大半は卵を産む能力のないはたらきアリとして生まれ、 ごく一部の”選ばれし卵”が生殖能力をもった羽のある雌アリとし生まれます。
雌雄のちがいは多くの動物にあるとしても、 同じ雌でありながら、卵を産まずに女王のために働くものと、 生まれながらにして女王になる権利をもったものとが区別されているのです。
残酷なまでに厳しい運命ですね。って 考えちゃいけないのでしょうけどね。
夏になると大量の羽アリが発生することがありますが、 あの羽アリたちこそ、生殖を持った雄アリと雌アリたちなのです。 結婚し、子孫を残して新たな社会をつくるために飛び立ったものたちです。
雄アリは雌アリを引き付けるにおいを出し、 雌アリはそれをたよりに雄アリの元へと向かい、交尾をします。 交尾を終えた雄は生きる使命をまっとうして死んでしまいますが、 雌アリには、これから大きな大きな仕事が待っています。
女王アリとして、たった一匹で卵を産み、社会をつくっていくのです。 地中に自分の部屋をつくり、卵を産みます。 エサは食べず、自分の唾液を与えて、卵から生まれたはたらきアリを育てます。 翌年からは、まったく卵を産むだけの存在となります。
食事の世話や、巣の拡張などは、はたらきアリがすべてやってくれます。 はたらきアリに世話をまかせ、さらにはたらきアリとなる卵を産んで、 どんどんと社会を大きくしていくのです。
さて、ここまで読んで、注意深い人は「おや?」と思ったかもしれません。
女王アリの受精卵からは、女王となる雌アリと働き蟻、 未受精卵「みじゅせいらん」からは雄アリが生まれるんでしたよね。
交尾を終えた直後は雌が産めるとして、 その後は女王が一匹で卵を産み続けるのだから、 はたらきアリが産めないんじゃないかと疑問を持ちませんか?
なんと驚くべきことに、 女王アリは、女王となる前に交尾した雄の精子を体の中に貯めているのです。 自由に、その精子を使ったり使わなかったりして、 はたらきアリとなる卵を産んだり、雄アリとなる卵を産んだりできるのです。 本当にアリというのは常識外れの生態をもった興味深い生きものです。
アリは種類が多く、その種類によって生態もまちまちです。 今回説明したことが通用しない種類も数多くいます。
巣をつくらない種類。 行列をつくらない種類。 そして、女王アリも雄アリも存在しない、はたらきアリだけの種類。
そんなのアリ!? と寒いオヤジギャグすら飛び出すほどびっくりです。 では ここまでです。

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