やきものには大量生産の工場で造られる工業製品としてのやきものと、
手作りで造られる工芸品としてのやきものとがあります。
工業製品のやきものは型を使い、同じ物を大量に生産するために
品質が安定している、揃えものが買いやすいなどの特長があり、
何より最大の利点は、安いということでしょう。
工芸品のやきものは一個づつ手作りで造られるために、
揃えて造ったものでも微妙な違いが生まれます。
それは長所でもあり、短所でもあります。
工芸品が工業製品に優る所は、出来たものに一個一個に個性や味わいがある
ということしか、逆にいえば無いのかもしれません。
価格では太刀打ち出来ませんし、製品の均一さでも、工業製品のほうに
分があることは明らかです。よほどいいかげんなメーカーのものはともかく、
大方の物は品質も確かです。
それでも、我々のような手作りで制作を行っている業者は、
工業製品には無い手作り工芸品の価値を信じ、制作に励んでいます。
幸い、日本の消費者は陶磁器に対して極めて理解が深く、
陶磁器ブーム、民芸ブームなどもあり、
手作り業者は生き長らえることが出来ました。
ところが最近になって工業製品に、あたかも手作りで作られたかのような
ものが出始めました。それらのものはかなり巧妙に造られているために、
それなりの知識と見識眼がないと、工業製品とは見破れないでしょう。
おまけに値段も手作り品のそれに近く、値段で見分けることも出来ません。
本当は手作り陶磁器と信じ込まされている方が、幸せなのかもしれません。
それでも、もしその手作り風工業製品を、やきもの好きの消費者が、
手作りならではの価値を求めて購入されていたとしたら。。。
だまされるほうが悪いのかもしれません。
でもその消費者は、我々手作り業者にとっては大事なお客様です。
後で量産品と知って悲しい思いをされたり、やきものを嫌いになられたり
して欲しくはありません。
前置きが少し長くなりましたが、このページは
手作り工芸品をお求めのお客様が、手作りもどきの工業製品にだまされずに、
間違い無く本物をお買い求めいただくお手伝いが出来れば、と作成しました。
工業製品は、型を使うことによって大量生産を行います。
つまり、型が使われた痕跡が残っているものは、
工業製品である確率がかなり高いといえます。
型を作るのには石膏が使われます。石膏はかなりの吸水性があります。
型に使えるような硬度を持つ物質の中では、おそらく一番でしょう。
その特長によって器体は速やかに乾燥し、型抜きもスムーズに行われます。
たとえば2000個のものを作るのには、型は2000個も要りません。
100個の型を20回、回転させれば良いのです。
型には作るものに応じていくつかの種類があります。
茶碗や皿などのものは、受け型を回転させ、固定ゴテで成形します。
後は乾燥させて、型から抜くだけです。最も原始的ながら、最も効率の高い型
です。上開きの形のものは、この型で成形できることから、最も大量生産に
適しており、実際、多くの製品が市場に出回っています。
このタイプのものを見分けるポイントは、高台にあります。
手造りつまりロクロ成形では、高台は必ず削って仕上げます。
それが型では、高台はあらかじめ型として成形されているため、
削る必要がありません。
つまり高台が角張っておらず、丸っこいものは型ものである確率が大です。
もっとも、型から抜いた後に高台を削り仕上げするところもあります。
徳利や一輪挿しなどの下膨れで口がすぼまった形のものを、袋ものといいます。
袋ものには割型が使われます。まず、型をゴムやひもなどで組み立てます。
次に土を泥しょう、わかりやすくいえば、ドロドロにします。
次に泥しょうを型に流し込みます。石膏は吸水性が高いので、型に触れる部分
のみが、水分を吸われて固まってきます。ある程度時間がたち、肉厚が適度に
出来てきたら、型をひっくり返して、泥しょうを抜き取ります。そして更に、
もう少し待ちます。型をはずせるぐらいに固まったら、割型を一つづつ
はずしていくことによって、取り出します。
この袋ものタイプのものは、以下のポイントで見分けます。
型から取り出した直後、割型の型と型の接合面に触れていた所には、
尖った出っ張りが残ります。当然この出っ張りは注意深く取り除かれますが、
釉薬を掛けれない高台まわりを中心に注意深く見れば、その痕跡を
認めることが出来ることもあります。
もう一つ、袋ものは泥しょうを抜き取って作るため、
泥しょうの垂れが、鍾乳石の出来損ないみたいな状態で内部に残っている
場合が、かなりの確率であります。
出来るだけ明るい所にいって、中を覗きこみましょう。
土のかたまりを一定の厚みにスライスした粘土板で作るものは、
タタラものと呼ばれます。もちろん、手作りの一種です。
タタラものは昔は工業的生産では作ることが不可能とされていました。
つまり、タタラもの=手作り品で、安心して買えました。
ところが、大量生産の技術というのは常に進歩するもので、
タタラものもどきを生産可能とする技術も生まれてきています。
その技術とは、袋ものと同じく割型を使いますが、泥しょうを鋳込む時、
泥しょうが型の隅々まで行き渡るように、圧力を掛けます。
そして、泥しょうは抜き取らずにそのまま固め、成形は完了となります。
タタラものは手作りの場合は、粗めの土を使うことが多いのですが、
泥しょうで鋳込む場合は、時間を置くと泥しょうが大きい粒子ほど下、
細かい粒子ほど上と分離してしまうために、荒土はあまり適しません。
つまり、タタラもののような形をしていても、
器体が滑らか過ぎるものは、もどきの可能性があります。
タタラはスライスして作ります。土が粗めだと切り糸で切る時、粒子の大きい
小石が、糸に引きずられて出来る線が、切断面に多く現れます。これを石目と
呼びます。タタラを型にあてがう時は、型からはずしやすくするために布類を
型に被せ、ある程度固まってから、型からはずします。この時に布の模様が
タタラに残ります。これは布目と呼ばれます。つまり石目や布目が残っている
ものは、手作りである確率が高いのです、と言いたいところなのですが、
最近の量産品は石目布目もどきをも可能としています。石目布目パターンを
持つ鋳込み型を作れば、それによって出来るものは、石目布目調のものです。
しかし、もどきを見分ける方法があります。
手作りでは石目布目のものに限らず、すべての特徴が一致する同じものが
出来ることはまずありません。
小石が同じ所に同じようにあるわけありませんし、
布が毎回、同じように型にかかるわけもありません。
つまり石目布目のみに限らず、全く同じ調子のものが二つ以上存在するなら、
それは間違い無く一つの原型をもとにした、クローンであるといえます。
量産品は型を使わなければならないという、宿命を背負っています。
型も原型をもとに作られるわけですから同じ型しか出来ません。
同じ型からは同じものしか出来ません。つまり手作りの特徴を
真似れば真似る程、量産品としての証拠を残すことになります。
最後に究極の裏技的見分け方を紹介しましょう。
それは製造元の見学を申し込むことです。それが手作り風量産品ならば、
当たり前ですが、おそらく色よい返事は返ってきません。
理由はお解りですね。
ちなみにひょうたん窯は見物OKです。
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