〜リュックの秘密〜
雪が道路の端の方に積もっている。
いや、寄せ集められていると言った方が良い。
ここは商店街。
祐一が住んでいる家からはそこそこ遠い距離にある。
祐一はよくここに来る。
ある人に会うために・・・
「ゆ〜いちく〜ん!」
ベンチに座っていた祐一がその声の方を見る。
赤いカチューシャにダッフルコート。
祐一と比べると小さい背丈。
月宮あゆである。
「おう、あゆ・・・・っておい!!」
あゆは祐一の場所へ走ってきた。
減速する気配は無い・・・
「ゆ〜いちく〜ん!!!」
そして、あゆは祐一に飛びついた。
「おっと。」
が、祐一はヒラリとかわす。
「えっ?」
ズッズシャーーーーー!!!
あゆが雪の上をヘッドスライディングする。
「・・・・・。」
「あゆ・・・今回は俺が悪かった。」
祐一は苦笑いしながら倒れているあゆに謝る。
「・・・・。」
だが、あゆからは返事がない。
「・・・実は全然痛くないとか?」
「うぐぅ〜、すっっっっっごく痛かったよ〜!」
顔を起こしたあゆの目には大粒の涙がぽろぽろこぼれていた。
「だけど、おまえが飛びついてくるから悪いんだぞ。」
「うぐぅ〜、祐一くんが避けるからだよ〜!」
そして、祐一はあゆが持つ紙袋に気付いた。
「・・・なあ、あゆ。今日の獲物は大丈夫なのか?」
「うぐぅ、獲物じゃないよ〜・・・・あっ!!」
あゆが紙袋の中を確認したとき、中身が大変なことになっていた。
「うぐぅ〜、全部潰れてしなしな・・・。」
あゆの目に再び涙が浮かぶ。
「もっかい行ってくるね。」
と、あゆはまた走ってどこかへ行ってしまった。
「おい・・・あゆ・・・」
祐一は珍しく、あゆのペースにのまれてしまった。
・・・数十分後
「ゆ〜いちく〜ん!」
またベンチに座っていた祐一は声の方を見る。
またあゆが全力疾走で祐一の元へと走ってくる。
「今度ばかりは避けずに・・・」
と、祐一は体勢を低くした。
「ゆ〜いちく〜ん!!!」
そして、あゆはさっきと同じように祐一に飛びつこうとした。
「甘い!!!」
すると、祐一はいっそう体勢を低くし、あゆが頭の上を通過する。
「うぐぅ!!」
あゆが叫ぶ
その時、あゆの体が水平から垂直に変わる。
「・・・・・。」
あゆには何が起きたのかがわかってない。
祐一があゆを空中キャッチして持ち上げたのだ。
「あゆ、いい加減に普通に来れないのか?」
「うぐぅ〜、これで普通だよ〜。」
と、あゆがジタバタする。
「全く・・・」
そして、あゆと祐一はあゆが持ってきたたい焼きを食べ始める。
「あゆ、今日は盗んでないよな?」
「うぐっ・・・ボクは盗んでないよ。」
「ほんとか?」
「うぐぅ・・・・・ホントだよ。」
あゆの顔が少し引きつる。
「・・・まあいいか。そう言えば、おまえのリュックに何が入ってるんだ?」
「うぐ?これ?」
と、下ろした羽根付き鞄をさす。
「ああ。まさか、中はたい焼きばかりじゃないだろうな?」
「違うよ。それじゃあ、実演してみせるね。」
「実演?」
あゆが鞄に向かって、何か念じ始める。
すると、鞄の羽根がなにやら大きくなっていく。
「え?・・・え?」
祐一は動揺している。
「そこっ!!!」
あゆの気合いの入った一言と共に鞄はどこかへ飛んでいってしまった。
「・・・あゆ、あれは?」
「うぐ?ボクのサポートをしてくれる鞄だよ。便利でしょ。」
と、あゆは笑顔で話す。
「サポートって・・・食い逃げのサポートか?」
「違うよ。囮だよ。」
「・・・あゆ・・・結局、食い逃げなんだな。」
その時、鞄が飛んで帰ってきた。
「あっ、帰ってきた。」
その鞄を開けてみると、中にはホカホカのたい焼きが入っていた。
「うぐぅ、たい焼きはやっぱり出来立てだね。」
「・・・ファ○ネル?」
その後、祐一はこの話題に触れることは無かったという。
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