LOVE PHANTOM
僕が目を覚ましたときには、もう日が沈んでいた。
君は、ここにはいなかった。
笑顔の君なんてここにはいなくて、ただ君は泣いていた。
理由なんて、何も告げてくれない。
夢なんかじゃないんだ。そこにはただ現実のみがあって、
ここには何もない。ただ僕のみが彷徨っている。
運命なんかじゃないと信じたい。君の笑顔を取り戻したい。
君の愛のみが僕にとっての幸せなのだから。
耐えられない。こんなちっぽけな箱庭の時間は。
もっともっと大切なものを置き去りにしてまで、ここにいる価値なんて無いんだ。
ここにいたら狂ってしまいそうだ。
ほんのちょっと寛容の心をもつだけで気持ちは楽になる。それをしなかったのは、
ただ単に僕の気持ちよさを優先したからなんだ。
どんなことでも、君とならやれたわけじゃなかった。
君とやりたかったけど。
もはや二人でいることに何の意味などない。
ただ、二人で何かを共有することにのみ意味がある。
それこそが本当の愛情。
多分僕を笑わせてくれるのは君だし、悲しませるのも君。
僕はもはや自意識と呼べるものを見失いながら、快楽に溺れる。
それでもいい。今僕が信じるのはここにある瞬間のみ。
輝いている君の存在のみ。
初めは何も無かった。何も無かったから、ここまで重いものを持っていられた。
真っ白な大地だったから、何色にでも染めることが出来た。
君に染まり尽くしたんだ。そこには何一つ違和感は無くて、ただ今の情景のみがある。
過去も流れていくけど、今君はいない。
いないのだけれど、何かを感じているような気持ちになる。
それが妄想だとしても、それしか信じることは出来ない。信じないと、
僕の存在はあっという間に崩れ落ちてしまう。
何処かで僕を待っている、無駄な希望のみに突き動かされて動く。
悪魔にすがってでも。
染まり尽くした果てに、この無常観はあった。
すがるものは、僕の目の前にはいなかったんだ。
僕がすがっていたもの、それはただの妄想でしかなかった。
妄想は常に僕に忠実で僕の欲望を全て満たしてくれた。
現実の君は腹が立つほどに我侭で、僕はそれに幻滅していた。
いつのまにか僕は妄想と現実の役割を逆転させていたんだ。
君の存在に意味なんてなかった。僕には幻が全てだったんだ。
幻の根幹である君を置き去りにして、一人で快楽に溺れていた。
君を愛していたはずなのに、愛の対象を誤っていたんだ!
君の足元を見ながら一歩一歩歩いていけば、きっとこんなに絶望することも無かった。
同時に、きっと歓びあふれる人生にはならなかっただろう。
どちらを取っても、いずれは破滅するのではないだろうか。
本当は誰かに愛してもらいたい。幻をしゃぶるのではなくて、
誰かの存在に抱きしめられたい。一方的に道を見誤るのではなくて、
君に導かれるままに進んでいきたい。
受動的であるとしても、それだけで愛は進んでいくんだから。