| ■妖刀一閃■ |
えーと、萌イラストだけで終わらせるつもりだった涼子と朔の話なのですが、描いてるうちにだんだん話が纏まってきたので
100のお題に絡めて書いていこうと思います。
※これの前振り話が上部リンクの先にありますので、できればそれも読んでいただけると分かりやすいかもです
| 100のお題 11題目〜20題目 |
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11題目 咆哮 「馬鹿かお前!言ってる傍から!!」 聞きなれた怒鳴り声に、はっと意識を取り戻す。 そうだ、いけない!今は白雪姫様を助けなくては。母のことも気になるけど…と考えかけて、慌てて頭を振る。また時空に囚われてはたまらない。 「ご、ごめん朔。ちょっとぼっとしてて…」 「涼子!大丈夫か?!」 「大丈夫です、隊長!すいませんでした!」 朔の手をよじ登り、もとの狭間へと戻ってきた涼子は、ほっと息をついた。 「ったく、気をつけろよな?たまたま俺が気がついたから良かったものの…。やっぱり涼子、お前先歩け。また落ちるかもしれないし」 「ごめんって…もう、大丈夫だってば…」 ぶつぶつと決まり悪く呟く涼子の背に向かって、朔はほっと安堵の息をついた。 「さて、出口だぞ。二人とも気を引き締めろ。多分出ると同時に戦いになる。俺達が飛び込むと同時に雪が結界を解き、外に待たせてる隊員たちが雪崩れ込んでくる。しばらく持ちこたえれば援軍が来るからな」 「は、はい!」 うわああああ!今気が付いた!涼子剣を持ってない!いやこれはあれだ、多分背中に背負ってるんだよ!それかうーんとうーんと、あ!きっと紳士な朔が持ってくれてるんだ、間違いない! え、えー…まあ何だかんだで11題目。咆哮ですが、朔が怒って叫んだ→咆哮。ひねりも何も無いです。朔は怒ってるというより、すぐ前を歩いていたのに気が付くのが遅れて、涼子が危ない目に合ってしまったって事で、自分に対して腹立たしいだけなのですが…。ああもう俺の馬鹿!みたいな。 表情が分かりにくので、涼子は本当に朔が怒ってると思ってちょっとしょんぼり。 朔と涼子はかなり強いです。子供なので隊長になれないでいますが。 特に涼子の持つ剣『血喰らい』は持ち主を選ぶ剣なので、涼子が選ばれるまで朔の家に転がってました。意思を持った剣(とはいえ話したりはしない。ダイの剣みたいな感じ)で、涼子の持つ妖の潜在能力を120%引き出すすごいヤツなのです。 |
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12題目 並んで 時空の狭間を飛び出し素早く朔と背中合わせになる。ざっと見渡し白雪の姿を探すと… 『いた!よかった、ご無事だ…』 先ほど行く手を遮っていた光の壁と同じものが、白雪の周りを覆っている。仲間達も結界の中に皆いるようだ。 涼子たちに気付いた白雪が、こちらは大丈夫と言うように微笑み、結界を解く。既に時雨が白雪たちを守り、戦いを始めていた。 「皆無事みたいね。朔、『血喰らい』を解くわ。…フォローよろしく」 「分かった」 短く会話すると、涼子は刀を抜き放つ。喜びに身を震わせるように、『血喰らい』がチリチリと音をたてて輝きを増し、その刃の輝きに呼応するように涼子の瞳が紅く変わっていく。 ひと目でそれと分かる変化に、襲撃者たちがざわめいた。 「あの女…!最近暴れまわってる『血喰らい』の使い手だ!」 「やば…俺かなり血が濃いんだよ!」 そんな反応を楽しそうに見ながら朔が叫ぶ。 「早く逃げたほうがいいぜ?『血喰らい』は妖の血が大好物だ。人に近いものはいいが、妖は切られりゃ全身の血を吸われて即死…この寮に入れるだけの妖気を持ってるって事は、まあ間違いなくお前ら全員そうだろな」 そこまで言って、朔は声のトーンを落とした。 「…とはいえ同族を人間に売って金にしようなんてやつらは、生かしとく気は無いがな。…それに」 ちらりと朔は涼子を見る。俯き、抜き身の刀身を提げた腕をだらんと下げていた涼子がゆっくりと顔を上げる。 その目に感情は無い。まるで蛇のような瞳に映るものは、狩るべき獲物だけ。 よろりと揺らめきながら、一歩前に出た−と思った瞬間、恐るべき跳躍で敵陣の只中へと着地する。 「あいつがこうなっちまうと、全て終わるまで止まらないからな」 呟きながら涼子の元へと影のように駆け寄る。 まるで二人で舞っているかのような動き。それは、妖に死をもたらす踊りであった。 あ〜、だんだん長くなってきたなあ(苦笑)100のお題始めたばっかの頃は、5行くらいで台詞のみにして…とか思ってたんだけど、無理が出てきた。1題目とはえらい違いだ。今後どんどん長くなっていきそう。という訳で12題目・並んで です。これもまたそのまんま。朔と涼子が並んで戦う、という。涼子の持つ剣がやっと活躍です。『血喰らい』は本当は人の血を吸う事も出来るんだけど、自らの意思で妖の血しか飲まない!と決めてるのです。一応ここ伏線ね!私が忘れないように書いておこう(笑)すぐ設定忘れるから。 で、涼子は剣を使うとトランス状態になってしまいます。朔がブレーキ役。そのうち間違って切られそうですな。 |
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13題目 忍 「ひいい!こ…こんな奴らに勝てるかよ!」 「くそ、こいつらよりはあっちの男の方が突破出来そうだぞ!」 涼子と朔に次々屠られていく仲間達を見て、一部の妖が時雨の方へと踵を返す。 そんな奴らを見て朔は密かに呟いた。 「あーあ、まだ涼子に斬られた方が生き延びられたかもしれないのに…。隊長が相手じゃなあ、可哀想に」 「わあああ!ちくしょお!そこをどけぇ!!」 眼前に妖が迫っても、時雨は目を閉じたまま動こうとはしない。侵入者達が眼前に集まるのを待ち、おもむろに瞳を開いた。 「俺の目を見ろ」 時雨の瞳から、妖しい光がこぼれ出す。 「何言ってやが…うわあああ!」 言いかけて、男は自分の身に起きた異常に気が付いた。 腕が、足が、石に変わっていく。やがて苦悶の表情のまま、男は完全に沈黙した。 「こいつ、イシハミだ!」 「目を見るな!石に変えられるぞ!」 もはや立っている者は数えるほど。先の時雨の一瞥により、周りは石の像でいっぱいになっている。 「ひ、ひい、助けて…」 邪眼から逃れようと振り返った男を待っていたのは、振り上げられた白銀の切っ先であった。 という訳で 13題目 忍 です。表に出さずに隠していること、ということで。時雨はいわゆるメデューサみたいな妖です。目が合うだけじゃ石化できないんですけどね。相手への殺気を込めないと。でも万一のことがあるとマズいのでいつもは隠しています。 |
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14題目 波 「どうしたの?時雨、涼子ちゃんが心配?」 波打ち際を歩いていく涼子と朔をぼんやりと見ていた時雨に、白雪が声をかけた。 「まあ…そりゃあな」 あの戦いの後、残党を追い散らし、ようやくひと段落着いた頃。涼子が朔に話があると言って一緒に散歩へ出かけたのだ。 「大丈夫よ、朔も涼子ちゃんも強いから」 「いや、俺が心配してるのはそういうことじゃなくて…」 言いにくそうに時雨が口ごもる。 くすっと笑うと、白雪はいたずらっぽい表情で時雨の顔を覗きこむ。 「おとーさんは可愛い娘が心配なのね?」 「やめてくれ、そういう言い方は。ただ、俺には責任があるから…」 「彼との約束?」 「そう、あいつの代わりに守ってやらないと」 「あら、そういう事なら別に涼子ちゃんの身に危険が無いんだもの、誰と付き合うかって事は守備外なのではなくて?」 「いや、だからな?」 「大丈夫よ!朔なら。そんな度胸ぜっったい無いから。さ、帰りましょ」 きっぱりとキツい事を言い切る白雪に、さすがに時雨も絶句する。 「…お前、結構毒舌だよな…」 「さっきね、お母さんにあったの」 波打ち際を並んで歩きながら、涼子が口を開いた。 「お母さんって…確かお前の母さんって」 「ん、私を産んですぐ亡くなってる。でもさっき、白雪様の時空の狭間で、お母さんが見えて…」 「それで時空に落ちそうになったのか」 「ごめんね、迷惑かけて…」 「いや別に、迷惑なんて思ってないから!そういう理由があったなら仕方ねえよ」 慌てて否定する。本当に迷惑なんて思っていない。むしろ自分に腹が立ってたくらいなのだから。 「…ありがとね、言い訳みたいだけど、誰かにこの事話しておきたくって。それだけ!」 そういうと涼子はくるっと踵を返した。 「今日はおばあちゃんの所に帰るわ!お母さんの事が聞きたくなったから。じゃ、おやすみ!隊長たちにそう言っといて!」 「え、う、あ、帰るって…」 もう少し話せると思っていた朔は、肩透かしを食らわされたように素っ頓狂な声を上げたが、気にせず涼子は手を振って走っていってしまった。 「…俺って…一体…」 静かな波打ち際に、朔の悲しい呟きが響く。その時、 「…たしか、この辺りで血喰らいの気配がしたはず…」 海岸から程近い岩場に、3つの影が現れた。 「ねーねー、風子ちゃん、見て!砂浜にいるあれって…」 「あの妖…確か朔とか言う…。丁度良いわ、あいつから涼子の事を聞きだしましょう」 「聞き出すだけで良いのか?あいつ涼子とつるんで暴れまわってる妖だろ? …殺っちまおうぜ?」 真っ黒な服を着た少年が残忍な笑みを浮かべて舌なめずりをする。 「駄目よ。下手に彼女を刺激したくないの。…そういえば銀は?」 「あにゃ〜?知らな〜い」 金の髪をした少女が可愛らしく小首を傾げて答えた。 「全く・・・まあいいわ 行きましょう」 「はあーい!」 「ちっ!つまんねーの!」 風子と呼ばれる少女に従い、彼らは朔へ向かって歩き出した。 14題目 波 です。波に見えない〜!!さて、ちょっと時雨の名誉ために補足。 彼はロリコンではないですから!白雪も訳あって涼子達より若い姿ですが、中身はいい年…ゴフゴフ。 |
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15題目 コンビニ 「もしもし、おばあちゃん?うん、涼子。今日はうちに帰るね。…え?ううん、別に。ちょっと会いたくなって。あ、大丈夫。ご飯は適当にコンビニで買ってくね。おばあちゃんプリン好きでしょ?うん、楽しみにしてて。じゃ」 そう携帯で話しながらコンビニを出てきた彼女の前に、一人の男が立ちはだかった。 「…?あの、なんでしょう?」 「いぶかしんで見返し、涼子は気付いた。男の目が赤い光を放っている事に。涼子の持つ『血喰らい』が警戒するようにちりちりと震え始めた。 『この人、妖…!』 慌てて身構えるが、どうも様子がおかしい。苦しげに胸を押さえて荒い息をついている。 『何、この人…怪しい…』 じりっと後ずさり、慌てて逃げ出したその時、 「ま、待ってくれ!話を…聞いて…」 言いながら、よろよろと2.3歩歩き、がくりと膝をつく。 「は、話くらいは聞くけど…何?」 あまりに真剣な男の様子に、警戒しつつも涼子は足を止めた。 「涼子さん、だろ?あなたにこれから、会いに来る人がいる。その人はあなたに…自分と共に来るように言うだろう…」 そこで一度言葉を切り、苦しげに呻く。 「でも、お願いだ。彼女について行かないでくれ…たの、む…」 必死の思いを瞳に込めて、男は涼子を見つめた。何が何だか分からないが、とにかく男が本気で訴えたいことがあるのは分かる。 「…わかった、一応気に留めておくわ。…あの、大丈夫?」 「ああ…もう、平気だ…。ありがとう、涼子さん」 言って男はまだふらつく足取りで立ち上がった。 「後、ずうずうしい願いだとは思うが、もう一つお願いできないか?すぐまたお会いすることになるとは思うが、ここで俺に会った事は伏せておいて欲しいんだが…」 「は、はあ…。別に構いませんが」 涼子の答えに心底ほっとした表情をすると、男は涼子に一礼し、胸を押さえたまま歩き出す。 『何だったんだろう、あの人?何で私の事知ってたのかしら…それに苦しそうだったけど大丈夫かな?私に会いに来る人って一体誰だろう』 しばらく男の去った先を見ながら思案した後、涼子は駅に向かって歩き出した。 15題目 コンビニ です。キャラが増えてきました。誰が誰か分からなくなってきました。後々設定が狂いそうな悪寒…。 もしコンビニ出たところで知らない男がハアハア言いながら立ちふさがったりしたら速攻警察に通報→逮捕でしょうな、普通。 |
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16題目 砂 人の近づく気配に気付き、慌てて姿を戻そうとした朔の耳に能天気な少女の声が届く。 「あ〜、大丈夫だよう。あたし達あなたが妖だって事知ってるから〜」 ひらひらと手を振りながら、友好的に金髪の娘が笑う。その少女の隣には、正反対に不穏な気配を身に纏った男が立っていた。 「あんた朔ってヤツだろ?最近涼子って女と暴れてる。…強ええんだってな?」 言って赤い瞳を細め、にやりと笑う。 「是非殺りあいてェもんだなぁ…」 瞬間男の姿が消えた。 『…上!』 考えるより先に体が動く。反射的に身をよじると、数瞬前まで自分のいた場所に男の爪が刺さっているのが見えた。そのままの姿勢で尾を振るい男を弾こうとしたが、男は素早く飛び退り避ける。 「ちっ!やっぱ動きが早えな。奇襲にゃ結構自信あったのによ」 僅かに尾が掠っていたらしい。頬から血を滴らせながら男が呟いた。 「何なんだお前達、俺に何の用だ?!」 「さぁて、じゃあこれはどうかな」 朔の問いかけを完全に無視して、男は更に殺気を強める。 男の殺気に、朔も身構えた。その時 「いい加減にしなさい、俊太。戦うために来たのではないと先に言っておいたはずよ」 凛とした女の声が響くと、俊太と呼ばれた男から急激に殺気が消えていく。 「何だよ風子、ちょっとした挨拶だって、マジでマジで!」 「それにしては本気の殺気だったようだけど?」 「本気じゃねえと本当の力は見られな…」 「黙りなさい」 女の一喝に俊太という男はびくっとして黙り込んだ。どうやらこの女がこの集団のリーダーらしい。 「やーいやーい、俊太、風子ちゃんに怒られてやんの〜!」 しょぼくれる男を指差して笑いながら、金髪の少女が飛び跳ねる。キッと男は少女を睨みつけたが、少女には何の効果ももたらしてはいないようだ。 「何なんだあんたら。いきなり大したご挨拶だな」 「悪かったわね、この馬鹿が舞い上がっちゃって。ちょっと聞きたいことがあったのよ。…最近あんたと良くつるんでる涼子って子の事なんだけど」 涼子の名前に、朔がぴくりと反応する。 「…あいつがどうしたって?」 「涼子と話がしたいの。あの子はどこ?ここで『血喰らい』の気配を感じたんだけど、居ないみたいだからね。どこに行ったのか教えてもらいたいのよ」 「あいつに何の用だ?どうもあんた達からはやばい感じがするんでな。訳も知らずに教える訳にゃぁいかねえな」 言いながら、女の様子を伺う。暗いので顔は良く分からない。だが… 『声も、背格好も涼子に似てるな…。何者だ?』 「まあ、簡単に教えてくれるとも思わなかったけど。とりあえずもうここにはいない事は分かったし、いいわ。行きましょう」 くるっと背を向け、女は歩き始める。 「おい!何なんだあんたらは!涼子に何の用なんだよ!!」 襲撃者を追いかけようとした朔の足元の砂が、ざざっとざわめく。 『な、なんだ?砂が…』 と、突然砂が巻き上がり、朔の体を締め付け始めた。 「ここであなたとやりあう気はないわ。先を急いでいるの。…またね」 足を止める事無く顔だけを振り向かせ言うと、女は歩き出す。 「そいじゃねェ、朔ちゃん、まったね〜」 「…今度あったら、必ず殺す…」 「く、くそ、何だこの砂は!あの女の妖力か…?!」 何とかして抜け出そうとする朔の耳に、遠くから女の声が届く。 「安心なさい。そのうち自動的に解けるわ…」と。 16題目 砂 です。もう短くまとめる事は諦めました。無理っす。 さて〜、話がちょっと進みだしました。大体のキャラは出揃ってきたので、後はさくさくと進めるのみです。…さくさく…。 |
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17題目 駅で 最終電車を残すのみの田舎の駅は静かだった。鈍行しか停まらない無人駅。まだ電車が来るまでは10分近くある。 ふー、とため息をついて涼子は時計から目を上げた。 『何だったんだろうな、あの人…』 ぼんやりと、涼子はついさっき会ったばかりの男の事を思い出していた。 『どこをどう見ても怪しい事この上ない人だったな。妖だし、変な事言ってたし。私に会いに来る人がいるとか、会った事を内緒にしろとか。…内緒って言ったって誰に対してなのよ?』 と、その時誰かの歩いてくる気配に、ふと涼子は振り向いた。 そこにいたのは自分と同い年くらいの少女。真っ直ぐにこちらへ歩いてくる。 『珍しい、こんな遅い時間に女の子がいるなんて』 そういう自分も女の子だという事を棚に上げて涼子は思った。なおもその少女は涼子に向かって歩いてくる。涼子もその少女の目的が自分であることに気が付いた。ゆっくり振り返り身構える。 後3mといったところまで近づき、少女は口を開いた。 「久しぶり、ね。涼子…。私の事覚えてる…訳ないか。私だって忘れてたくらいだもの」 彼女から自分と同じ気配を感じる。恐らく妖だが、敵意は感じない。 少し震える声で、そして目じりを緩め、心底嬉しそうに少女は涼子に話しかけてくる。今にも抱きついてきそうに腕を広げ、近づいてくる少女に驚き、涼子は後ずさった。 「あ、あの、あなた誰ですか?どうして私の名前を知ってるんです?」 いいながら、涼子は妙なデジャヴを感じていた。 『私、この人を知ってる…?』 涼子の持つ『血喰らい』が戸惑うように鳴動している。敵とも、味方とも違う反応。そんな『血喰らい』の反応も妙だ。 「あ、ごめんねいきなり。わたしは…」 少女が笑いながら言いかけたその時、新たに3人の人物が 空 から現れた。 「風子ちゃーん!ひどいよう、あたし達を置いてくなんてェ〜!」 羽根の生えた金髪の少女が根っから明るい声をあげる。 「お!いたいた!!そいつが涼子ってヤツか。へェ〜、へェ〜!」 続いて、黒い肌、黒い服の少年がホームに着地して、好奇心丸出しといった視線で不躾に涼子を眺めまわす。 そしてもう一人。銀の髪、赤い瞳の男。 『この人、さっきの…!』 先ほどコンビニの前で出会ったあの男だ。騒がしい二人とは対照的に、無言で佇んでいる。 少女はその3人をちらりと見ると、ちっと小さく舌打ちをした。 「…涼子と二人で話をしたいから、あんた達は待機しているよう命じたはずよ」 先までの笑顔を消し、雰囲気をがらりと変え、少女は厳しい表情で命じる。 「えー、だってえ。あたしだって涼子ちゃんに会いたかったしい」 「いーじゃんか風子、なあ?」 「駄目よ。さっさと帰りなさい」 きっぱりと風子は言い放つ。少女の瞳が赤く輝き、どこからとも無く3人を押し出すように突風が巻き起こった。 二人はそんな風子の様子に口をつぐみ、「…分かった…」と小さく呟く。 「すぐに戻るわ。銀、二人を頼むわよ」 銀と呼ばれた男は無言のまま頷くと、ちらりと涼子を見た。その瞳に不安げな光を見て取った涼子は、先の男との約束を思い出す。 『お願いだ。彼女について行かないでくれ…』 すっと瞳を逸らすと、金髪の少女と黒服の少年を伴って去っていく。 「さて、邪魔者は居なくなったわね。…とても、大事な話があるのよ、涼子」 じっと涼子の瞳を見つめ、風子はゆっくりと話し始めた。 17題目 駅で です。駅にて出会う二人。さてその正体は―ってバレバレでんがな。 描いてる途中で気付いたけど、15題目と構図が一緒だ。ぐへー。 そして電車が只の箱になって悲しい…。 |
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18題目 電撃 「…どこから話せばいいのかしら…。ねえ、涼子、あなたお母さんの事、どれだけ知ってる?」 「お母さんって…私の?…私を産んですぐ亡くなったって聞いてるけど…。だから写真でしか知らない」 少女の突然の問いかけに戸惑いながら、涼子は答える。 「そう…顔は知ってるのね。じゃあ、これを見て」 言って差し出されたのは一枚の写真。おそるおそる手に取り写真を見たとき、涼子の背に電撃が走った。 「お、かあさん…?」 涼子の知っている母より少し年をとっているが、紛れもなくそれは母の姿だった。小さな女の子を抱き上げ、楽しそうに笑っている。その女の子はどうみても涼子にしか見えない。 「そんな、お母さんは死んだはず…そ、それに、この子…私…?」 混乱する頭を必死で働かせようとするが、考えれば考えるほど分からない。 「この写真の女性は、涼子、あなたのお母さん、月子よ。そして抱かれている少女は彼女の娘 - 私、風子」 写真を持つ手が震える。ゆっくりと顔を上げ、風子を見つめる。 「あなた、誰…?」 「私はあなたの双子の妹。長坂風子よ…姉さん」 たっぷり10秒は経ってから、ようやく涼子の唇が震え、言葉を紡ぐ。 「うそ…そんなの、おばあちゃんも父さんも、母さんは死んだ…って」 「じゃあこの写真は?それに気付いているはずよ?あなたも。私があなたに近しい存在であることに」 言われて涼子は黙り込む。確かに彼女とは初めて会った気がしない。それに…自分では良く分からないが、顔も良く似ているように思う。 「あなたは周りの人間に騙されているのよ、涼子。だって…母さんは人間に殺されたのだから」 「え…殺された?」 「そう、私が12の時にね。母を失い、ひとりぼっちで生きていた私を助けてくれたのが、教主様だったのよ」 「教主、様?」 「…おかしいと思わない?私達妖の血を継ぐ者は、人間よりも強く優れた能力を持つ者が多いというのに、何故人間から隠れて生きていかなくてはいけないの?迫害するにとどまらず、人にとって便利な能力を持つもの、優美な姿を持ったものは捕らえられ、売られたり、殺され剥製にされたり。母さんだって…」 言いかけた風子の顔がくしゃっと歪む。 「母さんだって、人間に…封妖石を狙われて…」 「なに、ふうよう…?」 「人として生きようとする妖にとって、妖力は危険を呼ぶだけのもの。漏れ出す妖気を吸い取ってくれる石よ。母さんは、人として平和に生きようとしていただけなのに、なのに、あの石が高く売れるから、って、母さんを、殺、殺し…」 唇をかみ締め、必死で嗚咽を抑えようとするが、抑えきれず風子の瞳からは涙が零れ落ちる。 「もう私はひとりぼっちなんだ、って…、家族も何もいなくなっちゃったって…そう思ってたの…でも…」 涙をぬぐい、風子は涼子を見つめた。 「教主様が教えてくださったの。私にあなたという姉妹がいるのだと。ずっと探していたのだけど、なかなか見つからなくって。でも、最近『血喰らい』を手に入れて、使い始めたでしょ?あの剣は、鬼女の血を継ぐ者にしか身を委ねないというから、ひょっとして、と思っていたの」 ビンゴだったわ、と風子は笑った。 「だから、姉さん。私と一緒に来て。人間に騙されては駄目。何一つ真実を伝える事無い人間や、戦いに利用しようとする妖に騙されないで。私を信じて」 「そんな事、いきなり言われたって…」 「だって姉さん、今この状態で信頼できる人が周りに居る?人間も、妖も、周りに居る人皆して姉さんを騙してたんだよ?この秘密を共有できる信頼できる人はいる?」 その時、立ちすくむ涼子のもとへ、ベルを響かせて最終電車が到着した。 ぎこちなく風子に背を向けて、電車へと歩き出しながら涼子は声を絞り出す。 「…ごめんなさい、今は、まだ、答えを出せない…。少し考えさせて…」 涼子に頷き、風子は答えた。 「ゆっくり考えて。また近いうちに会いに来るから。…その時に答えを聞かせて、姉さん」 ベルが鳴り響き、電車の扉が二人を隔てた。 18題目 電撃 です。涼子ちゃんショーック!て感じで。 涼子と風子のお母さん・月子さんが鬼女の血を受け継いでいて、お父さんは普通の人間です。ちなみに涼子の言うおばあちゃんは母方です。 |
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19題目 芝生 「涼子ちゃん、お風呂上りにスイカはどう?」 風呂から上がり、縁側でぼんやりと庭を眺めている涼子のもとに、祖母がスイカを持ってやってきた。 「…今日ね、風子に会ったの」 ぽつりと呟いた涼子の言葉に、祖母の動きが止まる。 「…そう。じゃあ、月子の事も聞いたのね?」 隣に腰掛けると、穏やかに祖母は聞いた。 「うん。お母さん、私を産んですぐ死んじゃった訳じゃ無かったんだね。風子と暮らしてたって…でも…」 言ってよいものかどうかと迷いながら、涼子は言葉を続ける。 「風子が12歳の時に、人間に殺されたって…」 「そう風子が言っていたの?」 それまで黙って話を聞いていた祖母が、驚いたように声をあげた。 「うん、そう言ってた。だから人と共存する事をやめて、自分と一緒に来てって…」 涼子の言葉に祖母は眉間にしわを寄せる。 「…確かに、風子が12の時に月子は何者かに殺され、風子は行方不明になったわ。ようやく手がかりを掴んだ時には、人を敵視して暴れまわる妖達の仲間になっていて、もう私達の言葉は届かなかった」 それにしても、と祖母は腑に落ちないという表情で呟く。 「でもどこにも人が殺したという証拠は無かったのよ。それをはっきり人が殺したと言い切るって事は、風子は何か秘密を知っているのかしら…」 そのまま考え込んでしまいそうな祖母に、涼子は慌てて次の疑問を問いかけた。 「でも、どうしてお母さんは風子だけを連れて家を出たの?一緒に暮らしてはいけなかったの?」 「そうね、当然不思議に思うでしょうね。あなた達が双子であることを隠し、離れ離れにした事を。…『血喰らい』が涼子ちゃんの手に戻ってきた時に、やはり運命は変えられないのだと思ったわ」 「運命?」 「『血喰らい』は持ち主を選ぶ刀。あの刀は、代々我が家に受け継がれてきたものだったの」 「え?でもあの刀は朔がくれたのよ?朔の家に転がってたって」 「朔…?その名前は知らないけれど、涼子ちゃん達が生まれたとき、ずっと沈黙していた『血喰らい』が涼子ちゃんを求めて反応を示したの。元々『血喰らい』が生まれたのは…」 言いかけて、祖母は口をつぐんだ。 「…?」 「…簡単に言うと、災いを呼ぶのよ、『血喰らい』は。だから刀とあなたを引き離した」 「でもだからって風子と私まで引き離さなくても…」 納得できず、涼子は声を上げる。 「風子は…。あの子は、呼び寄せるのよ…」 「呼ぶって?」 『涼子が陽なら、あの子は陰…。同じ属性を持つ片割れであるアレを呼んでしまう…』 口に出さず、心で呟きながら、祖母は不思議そうに自分を見返す涼子の頭を撫でる。 「とにかく、涼子は涼子の思う大切な人たちを大事になさい。おばあちゃんはどうこうしろとは言わない。でも、あなたを見守る人を悲しませないようにね。そうしているうちに、ちょっとずつ真実は見えてくるから」 「…全部は、教えてくれないの?」 涼子の口調が変わる。 「どうして?風子が言ってた。本当の事を話そうとしない人を信じられるのかって!どうして隠すの?!どうして風子を私から引き離したの?どうしてお母さんは風子を選んだの?どうしてお父さんは帰って来ないの?どうして…」 俯き、顔を覆う。 「どうして…?」 泣き出した涼子を背後から抱きしめ、祖母は優しく囁いた。 「…人の話す言葉は、嘘であることも多いからね。騙そうとしている人だってきっといる。だから、大切な事こそ自分自身の目で確かめてもらいたいのよ。涼子ちゃんの見つけ出した真実こそが、紛れも無い本当の真実なの」 ゆっくりと、祖母の言葉が染みこんでくる。背に祖母の体温を感じながら、涼子は泣き続けた。 19題目 芝生 です。おばあちゃん初登場。妖ですがどうみても人にしか見えない…というか人そのものなおばあちゃんです。 |
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20題目 am 05:23 幸恵はそっと涼子の部屋の襖を開け、中の様子を伺った。 昨夜、幸恵は泣きじゃくる涼子の心の助けになれば、と、涼子の母親である月子の日記を手渡したのだ。 月子が夫である始…涼子の父親と出会ってから、失踪するまで毎日欠かさず付けていたもの。一晩中読みふけっていたらしい。途中のページを開いたまま、涼子は眠っていた。 部屋へそっと入り、布団をかけてやる。涙の痕を頬に見つけ、指先で優しく撫でると小さく涼子は息をついた。 起こさないよう自分の部屋へ戻り、電話を手に取る。トゥルル…とワンコールしないうちに相手が受話器を取った。 『も、もしもし!?』 その素早さに幸恵は苦笑する。 「おはよう、時雨。ずっと電話を待っていてくれたの?」 『あ、幸恵さん。おはようございます。いえ…ずっとと言う訳では…』 「朝の5時にかけたのに、ワンコールと待たず電話に出ておきながら何を言うの?本当にあなたは昔から苦労性ねえ」 『はあ…』 全てお見通しな幸恵の言葉に、居心地悪そうに時雨は呟いた。 「本当はもっと早く電話するつもりだったのだけどね。涼子がなかなか寝てくれなくて。あまりあの子に聞かれたい話ではないしね。遅くなってごめんなさい」 『いえ、そんな。涼子は無事なんですね…よかった。実は昨夜、うちの朔というものが風子さんと接触しまして』 「朔…?どこかで聞いたような…」 呟き、記憶をたどる。と、昨夜の涼子との会話の中で出た名前だと思い出す。 「ああ、『血喰らい』を持っていたという…。その人が風子と会ったの?無事だった?怪我は?」 『ええ、怪我も無く、無事生きて帰ってきましたよ、血相変えて。涼子が危ない!ってね。話を聞くとどうも風子さんらしいと思いまして。連絡しようにも電話番号を知らなかったので…』 「ごめんなさいね、本当はあなたには教えておいても良いとは思っているのだけど、万一にも 片割れ に、この場所を知られたくないから…」 そこまで言って、幸恵は言葉を切った。 「それでね、時雨…気になる話を涼子から聞いたの…」 『気になる話…ですか?』 「ええ。風子がね、月子を殺したのは人間だと言い切っていたらしいの…」 「言い切っていた…。確かにそれは妙ですね。事件の際、風子さんは学校に行っていて直接は何も見ていないはず。なのに何故?』 「ええ。何か、風子の背後に第三者の影を感じるのよ。もしかしたら風子は、何者かに良いように操られているのではないかしら」 『風子を利用して益のあるもの、と言えば…』 「片割れ …まさか、ね」 『いえ、十分考えられます。でも…だとしたら何故風子をまだ生かしているのでしょう』 「それが分からないのよ。涼子にしても居場所を知ったならすぐ襲いに来てもおかしくは無いのに」 『…そうですね』 「何にしても、『血喰らい』が涼子の元に返って来た時に私は腹を決めたわ。片割れとの戦いが涼子の避けられぬさだめならば、逃げても逃げ切れぬものならば、涼子自身に真正面から立ち向かわせる、と。…逃げ続け、運命に追いつかれて命を落とした月子の二の舞にはさせないわ…」 『幸恵さん…』 「ごめんなさいね、時雨。あなたには保護者のような役割を負わせてしまって」 『いえ、それは全然!涼子は良い子ですし、それに…俺は始の代わりに涼子を守ると、自分で決めたんですから。それで…』 少し聞きにくそうに、問いかける。 『始から連絡は…』 「…ここ半年以上、連絡が無いわ…。前は必ず月に一度は涼子に手紙をくれていたのに」 沈黙がおちる。 「時雨。だから最悪の状況も覚悟しておいてね」 『大丈夫です、始は要領のいいヤツでしたから。きっと片割れの手のものから逃げるのに必死で連絡できないだけですよ!きっと』 明らかに空元気と言う口調で時雨は笑った。幸恵はそんな時雨の声を痛ましげに聞きながら、そうね、と答えた。−答えることしか出来なかった。 20題目 am 05:23 です。夏設定なので、もう日は燦々と輝いてます。 朔から報告を受け、もういてもたっても居られなくなってる時雨。多分檻の中のクマ状態で電話の周りをうろうろ歩き回っていたことでしょう。 おばあちゃんと時雨は昔からの知り合い。時雨と始が親友だったので、幸恵ばあちゃんとも知り合いなのです。時雨と始・月子の話も出来上がってきたのですが…100のお題の中で混ぜ込むのは無理っぽいなあ。全部終わってから番外編でつくろうかな。 |
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