| ■妖刀一閃■ |
えーと、萌イラストだけで終わらせるつもりだった涼子と朔の話なのですが、描いてるうちにだんだん話が纏まってきたので
100のお題に絡めて書いていこうと思います。
※これの前振り話が上部リンクの先にありますので、できればそれも読んでいただけると分かりやすいかもです
| 100のお題 21題目〜30題目 |
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21題目 だれもいない 朝起きると、幸恵はいつも通りの笑顔で涼子を出迎えた。そんな幸恵にほっとすると同時に、どんな態度を取れば良いのか涼子は戸惑いも感じていた。 朝食を食べながら、涼子は恐る恐る話を切り出す。 「あの、おばあちゃん。私寮に戻るね…。」 「そう、分かったわ。寮主さんによろしくね」 にっこりと微笑んで幸恵が答える。視線を外したまま涼子はうんと答えた。 口数も少なく、いつも通りに学校へ向かう。いつも通りに授業を受け、いつも通りに部活へ出る。いつも通りに過ごす日常の中で、涼子は孤独を感じていた。 風子が言っていた。今この状態で信頼できる人が周りに居るか?この秘密を共有できる信頼できる人はいるか?と。 いると言えばいる。時雨も白雪も、助けを求めればきっと自分を守ってくれるだろう。二人は自分にとって親代わりのようなものだ。絶対的に頼ることの出来る存在。でも…と涼子は思った。親と仲間は違うもののように思う。 学校の友人に話せるような事ではない。気がふれたと思われるのがオチだ。 妖仲間に自分は恐れられているのも知っている。当然だろう、『血喰らい』は妖を喰らう刀。その使い手である涼子に、できれば近づきたくないというのが本音であろう。 「だれもいない…」 ぽつりと呟いて、ふと一人の男の顔を思い出す。朔。朔なら話を聞いてくれるだろうか? でも、朔は、涼子を信頼できるようになったら正体を見せる、と言ったきりまだ正体を明かしてくれてはいない。朔もまた自分を信じてくれていないのだ、と涼子は膝の間に顔をうずめた。 だれもいない。 「あの…涼子、さん?」 唐突にかけられた声に、はっと涼子は顔を上げた。そこには一人の少年が立っていた。 『えっと…誰だっけ…。どこかで会ったような…』 考えて思い当たる。いつだったか校舎裏でいじめられていた少年だ。クラスは違うが、確か同級生だったはず。 「…藤原君?」 問いかけると、少年は嬉しそうに頷いた。 なんでこんな所にいるんだろう?と涼子はいぶかしんだ。ここは朔と待ち合わせをする時などに使う、人目の無い崖っぷちの丘だ。普通こんな所に人が来るとは思えない。 「どうしてこんな所に?」 「え、えと…あ、あの、同級生に追いかけられて、人気の無い方に逃げてきたらこんな所に…」 しどろもどろの弁明に、涼子は何となく事態を察した。またあのクラスメイトたちに虐められそうになって逃げてきたのだろう。 「あ、あの。何か元気ないみたいだけど、どうしたの?」 話を逸らしたいのか、藤原は涼子に問いかけた。 「え?…そう?」 「うん。今日、ずっとぼーっとしてたし…」 「今日?ずっと?」 まるで一日監視していたかのような物言いに涼子は眉をひそめる。居心地の悪さに涼子は立ち上がった。 「…私、帰るわ。それじゃ」 「あ、いや、いいよ!俺もう行くから。じゃあ!」 逃げようとした涼子の気配を感じてか、慌てて藤原は手を振ると走っていってしまった。 その素早さにしばしぽかんとしていた涼子だったが、何となくもとの場所に座りなおす。まだ寮に帰る気になれない。 時雨には今日は寮に帰るとメールを送ってある。早く帰らないと、と思うものの、どうも動く気になれず、涼子はぼんやりと夕日を見つめた。 と、その時。背後の茂みががさりと音を立てた。 21題目 だれもいない です。さてさて藤原君の正体は?って隠す気も有りませんが。 初めは涼子をクールビューティーに描こうと思ってたんですが、話の流れで普通の女の子になってしまいました。でもまあいいか。クールビューティーじゃ話が一瞬で終わってまうわい。 で、寮ですが、涼子はおばあちゃんと時雨が知り合いとは知りません。学校まで結構距離があるので、下宿先だと幸恵には伝えてあります。寮主さんってのが時雨の事です。 |
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22題目 頭痛い 「…よう」 はっとして振り向いた涼子の目に映った人物。それは丁度先ほど思い浮かべていた人…朔だった。ほっとしたような、少しばつの悪そうな表情を浮かべ、涼子は朔から視線を逸らせる。 「昨日妙なヤツに絡まれて、お前の事聞かれたりしたから心配してたんだぜ?大丈夫だったか?」 「…うん、怪我とかはしてないから、大丈夫」 歯切れ悪く涼子が答える。そんな涼子の顔を、朔は心配げに覗き込む。 「なんか顔色も悪いぞ?絶対なんかあったろ?」 そんな朔に、大丈夫、と言いかけて、涼子は押し黙った。 大丈夫なわけじゃない。助けて欲しいと思ってる。でも。何をどこまで、どう話せばいいのか。考えるうちに頭が痛くなってくる。 へたりとその場に座り込むと、涼子は痛む頭を押さえてゆっくり言葉を絞り出した。 「…色々、一度に起こっちゃって。私自身混乱してるの。だから一人でもう少し考えたくて…」 「別にいいぜ?ゆっくり考えればいい。何も無理やり聞き出そうなんてことはしないから。ただ…」 きちんと向き直り、朔は続ける。 「一人で背負い込むなよ?一人で考えてると行き詰っちまうことも有るし。それに、あんまり一人でいない方がいい。何時またあいつらが来るかも分からないし。邪魔かもしれないけど、俺はお前の傍にいるから。話しかけたりはしないから、好きなだけ一人で考えればいい」 「別に邪魔だなんて…でも朔はいいの?忙しくない?その…妖としてじゃなくて、人としての生活だってあるでしょう?」 自分で言って、少し落ち込む。朔がまだ自分に正体を明かしてないのは信頼してくれていないからじゃないか、というのを思い出したのだ。 「…正体、見せようか?」 「え…?!」 心を読まれたかのようなタイミング。涼子は驚いて朔を見返す。 「もし、お前が俺に相談できないでいる原因の一つがそれで、俺の事信頼できないって言うんなら、別に見せたっていいんだぜ?何となくタイミング逃して見せそびれてるだけなんだから…」 しばし、沈黙が訪れる。先に沈黙を破ったのは涼子だった。 「ううん、やめとく。なんかこんな状況で正体を見せろなんて言ったら、交換条件みたいでいやらしいし。…朔とは、そういうの関係無しでいきたいから」 「そうか…」 ちょっとほっとしたように答える。 「落ち着いたら、一番に朔に話すわ…。だから、今はもう少し…もう少しだけこうしていさせて…」 そのまま涼子は黙り込む。朔も一声、ああ、とだけ答えると、涼子から視線を外し、空を見つめた。 もうとっくに日は沈んでいる。明るい満月が、二人を静かに照らしていた。 22題目 頭痛い です。考えすぎて涼子の頭がオーバーヒート寸前です。そして朔さんストーカー気質全開でございます。よう考えてみ、涼子さん?そんなベストなタイミングで現れたりしておかしいと思わないのかい?本当に無防備だ…ちょっと世間知らず過ぎますな、この嬢ちゃんは。 |
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23題目 ラヂオ 風子の部屋から微かな音が洩れ出ている。ラジオを聴いているらしい。珍しい事もあるものだと銀は思った。 風子はあまり人間世界の情報を好まない。多分母親を思い出すからだろう。テレビも好きではないし、せいぜい音楽を聴いたり本を読む程度だ。 しばし部屋の前で逡巡した後ノックをすると、どうぞ、と答えがあった。 「珍しいね、風子がラジオを聴いているなんて」 話しかけながら持ってきた飲み物を傍らに置く。 「うん。…母さんの事を思い出したくなって」 いつになく柔らかな目でラジオを見つめる。本当に珍しい。母親の事を自分から話すなんて。 「涼子に会ったこと、母さんに報告してたの。…私の持ってる母さんの形見は、このおんぼろなラジオだけだから。ま、位牌のようなものね」 指先で優しくラジオを撫でて、風子は呟いた。 「涼子は良い子みたい。穏やかで、優しそうだし、気も長そう。多分私より涼子の方が母さん似ね、私は気が強いから」 言って嬉しそうに笑った。 いつもの冷ややかな表情は消え、年相応のあどけなさが現れる。銀の前でしか見せない表情だ。それが嬉しくて、銀も珍しく微笑み返す。 が、続く風子の言葉が銀の笑顔をかき消した。 「あーあ、早く涼子と一緒に暮らせないかな。近いうちに又迎えにいかないとね。…どうしたの?銀。難しい顔をして」 「風子、その事なんだけど…ぐっ?!」 何かを決意したように話そうとした銀が、急に胸を押さえて崩れ落ちる。慌てて風子がその体を支えた。 「ど…どうしたの、銀!又発作?!ねえ、ちょっと!しっかりしてよ!」 風子の腕の中で、銀は苦しげに息を繰り返した。会った頃から銀はこの発作を繰り返し起こしている。 病院に行ったら?と何度か風子は促しているのだが、病気ではないと銀は病院へ行くことを断り続けている。病気でないなら何なのだと問い詰めたところ、呪いみたいなものだ、と曖昧にごまかされてしまった。 「だい、じょうぶ…もう、治まった…」 「大丈夫って、あんたやっぱり心臓の病気じゃ…」 「平気…。でも、風子。もし涼子さんの所に行く時には…俺も一緒に、行くから…」 言葉を一つ一つ何かの確認をするように選びながら、ゆっくりと銀は風子に告げる。風子は心配げに銀を見返しながら頷いた。 「もちろんそのつもり。だから安心してちょっとあんたは休みなさい」 その風子の答えに安心したように頷くと、銀は意識を手放した。 23題目 ラヂオ ちょっと場面は代わって、銀と風子のその頃です。朔と涼子が話してる丁度その時、て感じで。 風子は教主のもとで暮らしています。ちょうど涼子が白雪のもとで暮らすみたいな感じで。銀と俊太、それに金髪少女は風子の部下です。が、銀と風子は、他の二人よりもう少し近しい関係です。風子が教主に拾われた12歳の時からずっと一緒にいるので兄弟以上、恋人未満な感じ。 |
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24題目 走らないと 「ひゃあああ!時間!!」 うとうととしていた朔は、唐突な涼子の叫びに飛び起きた。 「何?!痴漢!?誰が?」 「痴漢じゃなくって、じかん!時計、時計は?」 言いながら携帯電話をごそごそと取り出す。時間を確認し、その顔色がさーっと青ざめた。 「…9時、45分…」 それを聞いて、朔も飛び起きる。 「やややややばい、殺される!帰るぞ、涼子!」 「待ってよ、朔!ちょっと!」 『血喰らい』を操るときの涼子は朔以上の身体能力を発揮するが、通常時は普通の人間と変わらない。木々の間をひょいひょいと飛び越えていく朔に着いていける訳が無い。 「待って…きゃあ!」 苔の生えた木の根に足を取られ、涼子は悲鳴をあげる。 「涼子!大丈夫か?…仕方ないな」 言うと朔はひょいと涼子を抱えあげる。 「ちょ、ちょっと朔!」 抗議の声を上げる涼子を無視して大きくジャンプすると、一気に森を抜け、街を駆けていく。 「後10分…やばいな、間に合うかどうか」 「ちょ、と、朔!絶対落とさないでよ?!」 二つの影が、ビルより高い位置をものすごい速さで駆けていく。耳の横で風がびゅうびゅうと鳴る音を聞き、涼子は朔にしがみ付くと引き攣った声を上げた。 街が背後へと流れていき、郊外へと風景は変わっていく。目的の寮はもう目の前だ。 「よっしゃ、間に合っ…あーーーー!!」 言いかけた朔が絶望的な悲鳴をあげた。寮が光の壁に覆われていく。携帯電話の時間は10時1分。 寮の門の前でがっくりと肩を落とす二人に、恐怖が迫っていた。 24題目 走らないと です。走るというより飛ぶ感じですが。いいなあ、こういう風に走れたら気持ちいいだろうなあ…。ビルくらいの高さをひょいひょい、っと。 朔の動きは早すぎて、もし一般人が見ても影が走った?程度にしか見えないということで一つ。 |
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25題目 俺の目を見ろ 「…さて、どうして門限に遅れたのか、言い訳を聞かせてもらおうかな」 穏やかな物言いが、さらに二人を固まらせた。 『怒ってるよ…めっちゃ怒ってるよ…』 『隊長がああいうものの言い方するときはかなりキてる時だから…』 玄関に正座させられた二人は、時雨に聞こえないよう小さな声でぼそぼそと話す。 「で?こんな夜遅くまで何をしていたんだ?朔」 優しげにさえ聞こえる声音が、余計に恐怖を煽る。 「あ、う、え…と、その…」 言いよどむ朔に代わり、涼子が答えた。 「あの、私がちょっと一人で考え事したいって言ったら、朔が一人だと危ないからって傍にいてくれたんです、で、ちょっとぼーっとしすぎて…」 「ほお?こんな遅くなるまで考え事…考え事をねえ…」 ひいいいいい〜!と心中で二人は叫んだ。 「こんなに暗くなるまで二人で…」 声が徐々に低くなっていく。 「それにしても二人とも、何故私の目を見ない?心にやましい事があるからじゃないのか?」 見れるかー!と同時に心で叫ぶ。今見たら間違いなく石になるに違いない。 「ね、時雨。もういいでしょう?門限を破ったって言っても、たったの1分じゃないの。二人とも反省してるみたいだし…ね?」 見かねた白雪が仲裁に入る。 「駄目だ。1分でも遅刻は遅刻。ここで許せば1分が10分に、10分が30分に…と、どんどんルーズになっていくに違いない」 「後は私から良く言って聞かせますから。もう遅いですし…」 白雪様頑張れ、超がんばれ!と二人は心でエールを送る、が…。 結局二人が解放されたのは、それから1時間後の事だった。 25題目 俺の目を見ろ です。まるっきり父親の時雨と、お母さんポジションの白雪です。 余談ですが、朔は両親健在です。が、両親共にかなり血の濃い妖で、ものの考え方も普通の人とズレてます。基本自由に生きましょうという個人主義な一族なので、家族仲が悪いわけでもないのですが、子供達も早いうちから家を出て暮らしてます。 そんな訳で朔は随分前から寮生活。 それにしてもドージンワークを一気見しながら描いたせいか、時雨がかなりジャスティスちっくになりました。涼子がなじみで朔が星くん。ジャスティス好きだなあ(笑) |
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26題目 夜店 今日は夏祭りの日。寮の中はざわついていた。妖の血を持つものは何故か祭り好きの者が多い。妖はかつて神として祭られる事もあり、その血に先祖の記憶が宿っているのかもしれない。 「ね!お兄ちゃん!お祭り行こうよ!」 相変わらず何と無しに沈んでいる涼子を気にして、傍に付いている朔を誘いにミサトがやってきた。既に浴衣を着込んで出かける準備万端だ。 「あ〜…俺はいいや。全員出ちまうと無用心だし。留守番してるから行ってこいよ」 「平気だってば〜、お兄ちゃんも行こうよ!今までだって留守にして出かけてたけど大丈夫だったでしょ?雪様の結界だってあるし…あ、そうだあ、お兄ちゃんも浴衣着て行こうよ」 「…いや、いいって。人混みに行くなら変身解かないといけないしさ」 ちらりと涼子を見ながら言う。が、相変わらず涼子は心ここに有らず。ぼんやり本を眺めている。 「…だから気にせず行ってきな」 そんな涼子の反応にちょっとがっかりしながらも、朔は答えた。 「えー、やだ!行こうよ行こうよ〜!…あ、えっと…涼子も一緒にどう…?」 恐る恐るといった風に、ミサトが涼子を誘う。 「私…?私はいいわ。留守番なら私がするから、朔も行ってくれば?」 本から視線をあげ、涼子は朔を促す。 「え、でも…」 「ほらあ、涼子もああいってるんだし、お兄ちゃんも行こう!」 涼子の返事に気を良くしたミサトは、強引に朔の手を引く。 「わ、ちょ、おい…!」 「行ってらっしゃい」 にこりと微笑んで涼子に手を振られてしまっては、もう抗うことも出来ない。小さくため息をつくと、朔は祭りに出かける準備を始めた。 部屋へ戻り、意識を集中させる。ざわりと体中の鱗が逆立つ気配がし、徐々にそれが治まると鱗は消え、代わりに普通のヒトの肌が現れた。 浴衣に着替え、祭りへと向かう途中ちらりと涼子の様子を伺う。相変わらず涼子は本を読んでいて、すぐ傍に人型の朔がいるというのに気が付く気配もない。 残念なような、ほっとしたような気持ちを抱えて、朔はミサトと祭りへ向かった。 「こ、こら!腕を組むなって!」 「え〜?いいでしょ?傍から見てると、あたしたちってどう見えるのかなあ?なんちゃって〜」 「あら、朔。あなたも来たの?」 聞き覚えのある楽しげな声に振り向くと、そこには白雪が立っていた。すぐ傍らには時雨もいる。 「今日はミサトとデートか?やるなあ」 揶揄するような時雨の言葉に、朔は慌てて首を振る。 「違います、デートじゃないです!!それにこの姿の時は、普通に本名で呼んでください」 「分かってるわよ、藤原高志君。それにしても今日はミサトとデートなんて初心な顔してなかなかプレイボーイねェ。涼子ちゃんの事はどうするの?」 うふふふふと白雪が含み笑う。 「ち、違うって言ってるでしょう?!何でそこで涼子の名前が出てくるんです!」 「へえ、どっちが本命だい?」 時雨のからかう口調の中に、どこか本気の響きを感じとり、朔は引き攣った声を上げた。 「だ…だから!違います!!そんなんじゃないです!」 全力の朔の否定に、ミサトが見る見る不機嫌になる。 「もう!そこまで全力で否定するなんて酷いよ、お兄ちゃん!」 ぶうと膨れるミサトに、白雪がにっこり笑うとこっそりと耳打ちをした。 「ミサト、高志はね、照れてるだけなのよ?」 「ああ!なんだぁ、そっかあ」 基本的に楽観的なミサトは見る間に機嫌を直す。 「ね、ミサト。金魚すくい、あなた得意だったわよね?さっきやってみたのだけど私全然駄目で…。教えてもらえないかしら?」 「うん!あたしこういうの得意だから、いっぱい取ってあげますよ」 にっこり笑うと朔の腕を開放し、金魚すくいの屋台へと向かう。やれやれといった表情で後に続こうとする朔の浴衣を白雪が引っ張って止めた。 「?何ですか?白雪様」 「はい、コレ」 白雪が差し出したのは、すぐ目の前の屋台で買ったたこ焼き二箱。 「頑張ってね」 意味深に笑うと、ぽんと朔の肩を叩く。金魚すくいの屋台ではミサトの神業にギャラリーが声を上げている。 ちょっと躊躇った後、頭を下げると朔は寮へと踵を返した。その後姿に白雪は小さく手を振り、ミサトの傍らにしゃがみこむ。 「やっぱりすごいわねえ、ミサト。私、一瞬で破ってしまったのに」 「ふふふ、実はポイは、全部一度水に入れたほうが丈夫になるんですよ」 もう朔のことを忘れ、金魚すくいに夢中になっているミサトに苦笑しつつ、苦い顔で寮の方を見ている時雨にも苦笑して白雪は一人呟いた。 「もう、いい加減に子離れすればいいのにね…」 26題目 夜店 です。白雪暗躍の巻(笑)。何だかんだ言っても多分皆白雪の掌の上で転がっているのでしょう。 そしてミサトちゃん久しぶりの登場。なかなか出してあげる機会が無くてごめんね。朔と涼子が17歳で、ミサトは13歳なのでお兄ちゃんと呼んでいる訳です。もう好き好き攻撃全開、引かぬ!媚びぬ!省みぬ!!が身上の突貫乙女。 あんまりにもあっさり朔の正体を明かし過ぎか?とも思いましたが、バレバレだし特に美形でもないし、まあいいか(酷) |
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27題目 星 「お、まだここにいたのか」 出かけた時と同じ部屋で涼子の姿を見つけ、朔は声をかけた。 「あれ、朔。もう帰っ…」 言いかけてぷはっと吹き出す。 「ちょ、何よその格好は?に、似合わない〜!」 朔の姿はというと、いつものリザードタイプの姿に浴衣という出で立ち。涼子はお腹を抱えると遠慮も無く笑っている。 「し…しかたねーだろ?着替えてたらコレ冷めちまうし」 照れ隠しも手伝って、憮然とした声でたこ焼きの入った袋を差し出す。 「何それ?…たこ焼き!?わあ、嬉しい!」 朔の差し出した土産に、涼子は久しぶりの笑顔を見せた。 「っても白雪様の差し入れなんだけどさ。お前、朝から殆ど食べてないから腹減っただろ?」 「うん、実はお腹ペコペコなの。ありがと」 言ったきり、しばし涼子は思案するような素振りを見せた。 「?どした?」 「ん…あのね、朔。あそこで食べない?いつも待ち合わせするあの丘。あそこならひと気も無いし…」 涼子の言葉にごほっと朔が咳き込む。 「あ、え、ちょ、ひと気が無いって…涼子、そりゃどういう意味…げほ」 「どういう意味って…前約束したでしょ?落ち着いて考えが纏まったら、一番に朔に話すって。忘れたの?」 いぶかしむ様な表情の涼子に、自分が何の勘違いをしたのかを気付かれる前に慌てて取り繕う。 「いや!忘れてなかったぞ?!ただ急だったから驚いただけで、別に他意は…」 「あんまり他の人には聞かれたくない話だし…。今日なら皆お祭りに行ってるから、私達の姿が無くても気にされないかなと思って…。都合悪かった?」 「い、いや!全然大丈夫だぜ?そ、そうだな、じゃあちょっと出かけるか」 何故かあたふたしている朔に、涼子は不思議そうに首をかしげた。 「…あそこがお祭りの神社だよね。屋台が明るいから良く見える」 「ああ。結構賑やかだったぜ」 「そっか…。ここは静かだね。…星がとても綺麗…」 言ったきり、涼子はぼんやりと星空を眺める。たこ焼きを頬張りながら、朔はそんな涼子の横顔を見つめた。 27題目 星 です。何のひねりも無いですが、満天の星空の下語り合う二人。 朔にとってはドッキドキハプニング〜、内心うへへへ、てな感じでしょうが、涼子は超がつくニブチンですので全くロマンチックの欠片もありません。頑張れ朔。 そんな二人が歯痒くて、色々協力してしまう白雪と、頼むから刺激しないでくれ〜とハラハラしている時雨なのです。 |
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28題目 辞書 「で、さ。取り合えずこれ見て」 涼子が朔に差し出したのは、先ほどまで涼子が読んでいた古めかしい装丁の、分厚い本だ。 「これってさっきまでお前が読んでた本だよな?なんだこれ、辞書?」 「そう。『民族風土学辞書』。妖怪の事についても詳しく書いてある本なんだけど…ここ。山女の章」 「山女?鬼女の一種だったよな?」 「うん、どうも私の体にその血が流れているみたいなの。自分のルーツを知りたくって調べてて見つけたんだけど…」 涼子の指し示したページを朔は読み始めた。山女とはどういう妖か、どのような特徴を持っているか、容貌は、伝承にはどういったものがあるか。様々な事が、かなり詳しく書かれている。 「ふーん…すごいなこの本。で、この本の何が引っかかってるんだ?」 「あの日、朔に私の事聞きに来た女の子って、私に似てなかった?」 「ん〜、暗かったから顔は良く見えなかったけど、背や年恰好は良く似てたかな…で?」 「山女は、双子か三つ子を産むって書いてあったでしょ?あの子…風子は私の双子の妹なんだって」 そういえば、あの妙な奴らはあの少女の事を風子と呼んでいたな、と朔は思い出す。 「妹…?でもお前一人っ子だって…」 「私もあの日初めて知って。だから俄かには信じられなかったんだけど、母さんの写真を持ってたの。5.6歳くらいの女の子と一緒の写真。その女の子、私そっくりで…風子の小さい頃なんだって。…さすがにそれ見ちゃうと信じるしかないから」 「え?でもおかしくないか?確かお前の母さんてお前産んですぐ…」 「うん。そうおばあちゃんに教えられてたんだけど、違ったみたい。何か色々複雑な訳があるみたいで」 そこで一度言葉を切ると、もう一冊本を取り出す。 「これ…おばあちゃんがくれた母さんの日記。あの時、時空の狭間で会ったのは、やっぱりお母さんだったみたい」 呟いて、あるページを開くと朔へ差し出した。 「読んでいいのか?」 「うん」 『5/16日 晴れ ビッグニュース!何と今日の検診で赤ちゃんが双子だと分かりました。早く始さんに報告したいな。うちの一族はみんな女腹で、おばあちゃんもお母さんも女の子しか産んでないので、多分この双子も女の子ではないかな?と予想。 お母さんに双子だよと報告したところ、何故か困った顔をしていました。それ以降お母さんの元気がないのが心配です…。どうして喜んでくれないのかしら? 5/25 晴天。今日は始さんと桜淵公園にお出かけしました。とてもいい天気。お腹の赤ちゃんも喜んでいるみたい。 そこで、とても不思議な事が起こりました。もしかしたら白昼夢かもしれないのだけど、空から人の声が聞こえて見上げたら、私に良く似た女の子が見えたの。幻?でも始さんも見たって言うから、やっぱり現実? 昔からよく変な物が見えたりしてたのだけど、これにはびっくり。お母さんが普通の人以外の血を受け継いでるらしいから、その遺伝かな。 雪ちゃんも予言をしたり、時空を越えたりって事を出来たりもするし、あの女の子も時空を越えてきたのかも? あの子から鬼女の力を感じたし、もしかしたらお腹の子だったりして。だとしたらどっちだったのかしら?二人で仲良くしてるか、私と始さんは喧嘩してないか、色々聞いてみたかったのだけど、すぐ消えてしまって残念。でもすぐに会えるもんね。楽しみです。』 「え、ちょ、何だこれ?雪様がなんで出てくるんだ?お前の母さんと知り合い?」 「やっぱりこの雪ちゃんって、白雪様の事だよね…?予言できる妖なんてそんないっぱいいないし…」 困惑したように言うと、涼子は唇を噛んだ。 「…白雪様に直接聞いてみればいいんだけど…でも…どうして話してくれなかったのか、聞くのが怖い…」 「…涼子…」 何と答えれば良いのか困って、朔はぱらぱらと日記をめくっていた。と、その時。 「あれ?何だこれ?」 日記の表紙とカバーの間。一部の糊付けがはがれて、中が袋状になっている。その中に紙切れがあるのを見つけ、朔は声を上げた。 「何か入ってる…手紙?」 「気が付かなかった…何でそんな所に手紙が?誰宛?」 「えーと、差出人は月子…受け取りは雪へ、ってなってる」 「お母さんから白雪様へ?」 二人は顔を見合す。 「…どうする、これ。開けてみるか?」 朔から手紙を受け取る。涼子の手は震えていた。 28題目 辞書 です。雪とお母さんの関係が少し出てきました。山女ってもあれじゃないよ、巨乳の姉ちゃんの事じゃ。安達が原の鬼婆とかと同系統の妖怪です。多産系の難産が多いんだそうで、出血を伴うため人の血を啜るのだといいます。 |
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29題目 たまご 「…そう、月子からの手紙…」 涼子から手渡された手紙を手に、雪姫はしばし佇んだ。 「読んでもよい?涼子ちゃん」 雪姫の問いかけに、涼子はこくりと頷いた。 手紙を広げ、読みはじめる雪姫。暫くの後、ふっと一つのため息と共に視線を上げる。 「涼子ちゃんは、読んでないのよね?」 涼子が頷くと、すっと雪姫は手紙を差し出した。 「読んで、涼子ちゃん。お母様からよ」 恐る恐る母の手紙を手に取る。 『- 雪ちゃんへ。この手紙があなたの手に渡っているということは、多分私はこの世にはいないのでしょうね。お母さんに時が来たら、この日記を涼子へ渡してもらうよう頼んであります。涼子からあなたへ手紙が渡るということは、取りも直さずそういう事なのでしょう。 あなた達と別れ、風子と共に暮らし始めてから色々ありました。私達の一族…山女は、必ず双子、あるいは三つ子を産むと言います。その私達一族が、一人ずつしか女の子を産まなくなったのには、遠い祖先が影響しているのだと知りました。 民族風土学辞書にある伝承が載っていたのです。かつて人に恋をした鬼女が、人の血を啜らねば生きていけないその身を嘆き、体を3つに分けたのだと。 男を愛した女性、人を襲う妖の本性、血を喰らう鬼女としての特性へとそれぞれは変化し、人としての心は男と結ばれ、一人の娘を儲け、血を求める鬼女としての特性は、形を持ち刀となった。 そして最後の一つ…憎み、殺さずにはいられない妖の獣の本性…その行方はしれない、と。 器を人の心に奪われ、魂だけの存在となった妖の本性は、どこへ消えていったのでしょう? そうして無理やり自分を裂いた妖は、人として生きることになりました。でも、その鬼女は一つの予言を残しています。一を三に分けるということは自然に反した行い。いずれ三は一へと戻ろうとするだろう、と。 ずっと1人しか子を儲けてこなかった私達一族に、再び双子が生まれました。風子は鬼女としての特性を、ごく普通に受け継いでいます。 でも、涼子は…。殆ど力を持たない普通の人間として生を受けました。妖の私から、只の人が生まれるなんて、余りに不自然です。 母さんと色々話し合い、私達なりに調べた結果、先祖の予言の時がやって来たのではないか、という結論に達したのです。 涼子は器。『血喰らい』は鬼女の特性を宿した刀。そしてそこに妖の本性が宿ることで、3が1へと正しく戻るのではないか。 涼子が生まれたとき、『血喰らい』が反応したのが証拠ではないかしら。涼子は一人でいれば、殆ど只の人間と変わりません。 でも、風子や私という、鬼女の強い力を持つものが傍近くにいれば、逆に涼子に片割れが気付く可能性が高くなるでしょう。 だから、私達は去ります。ごめんね、雪ちゃん。何も言わず去る私を許してください。あなた達を巻き込みたくないのです。時雨にもごめんねと伝えてください。 最近、私達の近辺に不穏な気配が漂っています。あまり時間が残されていないようです。 後、始さん…。もし、いつか、彼に会うことが会ったなら、彼に伝えてください。ごめんなさい。そして、ずっと愛しています、と。』 手紙の日付は、母の死の1週間前になっていた。涼子は読み終わると、白雪を振り仰いだ。 「…月子とは、親友だったの。私達がこの世界にやってきてから、ずっと…。どうして私に黙って消えてしまったのか、と恨んだこともあったのだけど、私達の身を案じてくれた結果だったのね…」 雪はそう呟くと、手紙の入っていた封筒から何かを取り出した。小さな紙袋に大事そうに入っており、なにやら文字も書かれている。 「これ、月子から涼子ちゃんへ、って」 見れば、それはペンダントだった。丸を二つに割った形になっている。 「風子ちゃんも同じものを持っているそうよ。二つをあわせると、一つの卵になるんですって」 「風子も…?」 涼子の背に回り、白雪はペンダントを涼子につけてやる。シンプルなプラチナプレートに、涼子の名が刻まれている。 「月子…お母さんは、涼子ちゃんを思ったからこそ離れて暮らすことを決めたのよ…。月子の決断を、恨まないであげてね」 ペンダントをぎゅっと握り締め、涼子は小さく、しかし何度も頷いた。 29題目 たまご です。さてー、何か一気に進めすぎて、後から自分の決めた設定に苦しみそうな予感〜(笑) 月子さんの失踪の謎がこれで解けました。まだまだ沢山解明しないといけない謎がいっぱいですが。いつも行き当たりばったりなので一番謎を解きたいと思ってるのは私だったり。ちゃんと纏まるんでしょうね、この話(知るか) |
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30題目 怖いよ ペンダントを握り締めながら、涼子はもう一度ゆっくり母の手紙に目を通した。どうしても視線が、その中の一文に引き付けられる。心の中にじわりと広がる不安に耐えるように、涼子はペンダントを握る手に力を込めた。 『…一を三に分けるということは自然に反した行い。いずれ三は一へと戻ろうとするだろう−』 「白雪様…私は3つに分けられたうちの一欠けらなんですか…?」 覚悟を決めると、涼子は恐る恐る白雪へと問いかけた。涼子の質問に一瞬動揺を見せた白雪だったが、すぐに涼子を真っ直ぐに見つめ返す。 「月子はそう考えたみたいね…。あくまで彼女の予想ではあるけれど…恐らくは…」 「もし、そうなら…3が1へと戻るというなら、私の中に妖の魂が還ってきたとき…」 そこで一度区切ると、気力を振り絞るように一度息を整え、涼子は続けた。 「私の…涼子としての意識はどうなってしまうんですか?その妖の意識にかき消されてしまうのですか?」 「涼子…」 ずっと黙って二人の様子を見ていた朔が、さすがに驚いた表情で声を上げる。 しばし考えるように黙った白雪が、言葉を選びながら口を開いた。 「…月子は、運命から逃げ切ろうとして追いつかれ、命を失った…。涼子ちゃんが朔に出会い、『血喰らい』を手に入れて私の目の前に現れた時には、再び月子の悲劇が繰り返されるのかとショックだったわ…。でも、その後幸恵さんと話し合って決めたの。月子と同じ目には逢わさせない。涼子ちゃんには『片割れ』の魂から逃げさせるのではなく、戦う術を教え、立ち向かわせようと」 答えになっていない白雪の言葉は、自分の考えを肯定するものなのであろう。ショックに涼子の表情が見る見る強張っていく。 「でも…私…戦うなんて…。そんな強大なものに立ち向かうなんて、無理です…怖いです…」 堪え切れず、涼子の瞳から涙が零れ落ちる。洩れ出る嗚咽を抑えられず、手のひらを口に押し当てる涼子をそっと抱き寄せると、白雪は優しく頭を撫でた。 「…大丈夫。大丈夫よ涼子。立ち向かわせるといっても、あなたは一人ではないわ。私も、時雨も、朔だっている。あなたが思っている以上に、あなたの事を大切に思っている人達は沢山いるのよ」 言って、そっと朔に頷く。 「そうそう、大丈夫だって!皆傍にいるんだからさ。いざって時には必ず助けに行ってやるよ。ほら、まだ起こってもないことで落ち込んでたってしかたねーだろ?な?」 明るく元気付ける朔に、ようやく涼子はぎこちなく笑顔を見せた。 「そうよ、涼子。私も必ずあなたを守るわ。」 「朔…白雪様…ありがとうございます…」 ペンダントを抱きしめるように握り、涼子は二人に頭を下げた。 白雪はゆっくり頭を振ると、ちいさく独り言のように続けた。 「…お礼なんていいのよ…私は全てをかけてあなたを守らないといけないのだもの。全ては、私の蒔いた種なのだから…」 ふと暗い目をすると、微かに瞳を伏せる。どうしたのだろうといぶかしむ涼子の視線に気付き、白雪は優しく微笑んだ。 お久しぶりの100のお題です。ずっと漫画にかまけてたので…。まあこんなペースで忘れた頃に続きが載るでしょう。 何か朔ってヒーローの割りに目立たないよね?おかしいなあ、作者的にはお気に入りなんだけど、どうみても白雪のがヒーローっぽい(笑) |
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